〔特集〕B&Sみやざき~九州新幹線がもたらした宮崎への新移動手段 鉄道路線のバイパスとしての一面も

 九州新幹線が全線開業した2011年3月12日以降、新八代駅での新幹線と特急列車との対面乗り換えが解消され、途中駅となった。その一方でこの日から新八代駅は新たな役割を担うこととなった。その鍵となったのが、同日から運行を開始した高速バス「B&Sみやざき」である。鉄道では小倉、大分廻り、鹿児島中央廻りなどが考えられる福岡-宮崎間の移動。一時期は八代駅から山間部を抜けて肥薩線、吉都線経由の特急列車が運行されていたこともある。しかし、九州山地を貫いても、迂回しても時間がかかり、山間部をトンネルの連続で開通させた九州道を走る高速バスと、空を飛ぶ航空機の2大勢力に支配され、この間の移動で鉄道が使われる場面は少なかった。そこに革命を起こしたのが「B&Sみやざき」で、高速バスと新幹線とをつなぐ新たな接続駅となったのが、新八代駅である。


 JR九州バス「B&Sみやざき」専用車。800系新幹線に準じた外観デザインで、車内はフローリングの落ち着いた雰囲気。4列で後方にトイレを装備する。宮崎営業所所属。


・新幹線と高速バスを接続して新たな移動手段を提案

 高速バス「B&Sみやざき」は新八代駅と宮崎駅との間を九州自動車道、宮崎自動車道経由で結ぶ高速バスで、JR九州バスが主体となり、産交バス、宮崎交通の計3社で運行されている。一見すれば、そんな区間の高速バスに需要があるのかと疑問に思う路線だが、全てのバスが新八代駅で博多方面の九州新幹線「さくら」または「つばめ」に接続し、乗り継ぐことで全区間でバスを利用した場合よりも1時間ほど早く移動することができる。高速道路が肥薩線、吉都線の沿線となる人吉市や小林市、都城市を経由し、鉄道が不便なこの地域と福岡をつなぐ第二のバス路線としての役割も担っている。


熊本県最大のバス事業者の九州産交グループの子会社である産交バス八代営業所が運行する「B&Sみやざき」。産交バスの営業所が運行する県外方面高速バスは珍しい。 


・航空機だけでなく並行高速バスも対抗、鉄道のような高速バス

 同じ区間を全区間で高速道路経由で運行される高速バス「フェニックス号」は新幹線開業までの間に航空機とシェアを二分するまでに成長し、時間帯によっては15分に1本、1日28往復と本数も多く、名門路線として知られる。フェニックス号の運行は、運行主体である西鉄と「B&Sみやざき」を運行する3社(産交はフェニックス号は親会社の九州産交バスが、「B&Sみやざき」は子会社の産交バスが運行)の4社で運営されるが、「B&Sみやざき」運行開始にあたってはJR九州バスと西鉄との間に亀裂が生じたとされ、2011年から2012年にかけてJR九州バスが「フェニックス号」の運行から撤退し、独自に「たいよう号」という高速バスを運行したことがある。現在では再び4社での運行に戻っており、「フェニックス号」と「B&Sみやざき」との間で乗客の取り合いが発生しているというわけでもなく、利用者が時間と費用で使い分けをしており、フェニックス号は旅行客や買い物客利用が、B&Sみやざきはビジネス客の姿が目立つ。九州では高速バスと鉄道との競争が熾烈で、大都市間でも高速バスが大活躍している。鉄道に比べて安く、所要時間が大きく変わらない場合が多いためで、JRではネット予約を利用した早特を高速バスと同様程度の価格に設定することで対抗している。B&Sみやざきに関しても、新幹線とセットとなった早特が設定されていて、フェニックス号や航空機などに対抗している。B&Sみやざきは高速バス路線でありながら、新八代駅で九州新幹線から分岐する高速鉄道のような位置づけと考えるのが正しいかもしれない。


 1日2往復のみ参入している宮崎交通。こちらは宮崎中央営業所所属。写真はB&Sみやざきに使用される4列車で、写真は「パシフィックライナー」で運用中のもの。


・「B&Sみやざき」の運行概況は

 先述のとおり、B&SみやざきはJR九州バス、産交バス、宮崎交通の3社で運行さている。現在の運行本数は16往復で、全ての便が新八代で博多方面発着の九州新幹線と短時間で接続している。JRと産交はおおよそ半々の運行本数で宮崎交通は2往復と本数が少ない。概ね1時間に1本で、本数ではフェニックス号に劣るが時間では1時間強はやい。途中の停留所は人吉IC、えびのIC、小林IC、都城北、宮交シティで、えびのICは5往復のみが停車する。フェニックス号が人吉ICで乗り降りのどちらもできるのに対して、B&Sみやざきは途中の停留所間の利用はできず、新八代駅と各停留所間の利用のみとなる。車両は3社とも4列シートのトイレ装備車で運行され、途中休憩はない。バス自体の運行時間は2時間程度である。基本的には1号車のみで運行されるが年末年始などの多客期には続行便が出る場合もある。


・高速バスなのにみどりの窓口で購入、現在では珍しい販売形態

 先ほど新八代駅から分岐する高速鉄道のような位置づけと話したが、乗車券の購入も特殊で、現在では珍しく駅のみどりの窓口で購入するのが基本となる。新幹線との乗り継ぎをメインとした路線だが、バス区間単独の乗車券も当然発売されていて、JR九州、四国、西日本のみどりの窓口で購入できる。実際に購入すると電車のきっぷと同じマルス券が発券され、それを運転手に渡して乗車する。バス会社でも扱っているが、他の高速バスと異なり産交、宮崎交通の運行沿線営業所でしか扱っておらず、九州のバス乗り放題券「SUNQパス」で利用する場合などはこれら営業所で座席を指定する必要がある。ネット予約は、早特はJR九州ネット予約で購入できるが、九州のほとんどのバスが予約できる「ハイウェイバスドットコム」には収録されておらず、バス単独での購入はJR系の「高速バスネット」で行う。実際バスの営業所でもネット予約と同じような方法で座席を確保しているようで、バス営業所や「高速バスネット」で座席指定すると後方席が指定される。みどりの窓口で指定できる座席より限られているようで、相席となる場合も多い。JR九州が発売している「2枚きっぷ」も各停留所と博多(福岡市内)間で設定されるが、一部ではバス営業所でも販売されていて、常備券で発券される。常備券で新幹線に乗れる貴重な区間でもある。


JR九州の「B&Sみやざき」用車にはJR九州バスの標準塗装のバスも存在する。車内は他のB&S車両と同じデザインで、ドア後が黒く塗装されている点が微妙に標準塗装と異なる。


・実際に乗車して福岡-宮崎の第三の手段を体感

 実際にB&Sみやざきに乗ってみる。新八代駅では新幹線が到着すると続々と乗客が駅前のバス停まで歩き、バスに乗り込む。新八代駅での滞在時間は10分未満で、すぐに発車。車内放送がかかり、運転手からの案内が終わるともう九州自動車道の八代ICを通過する。新八代駅と八代ICも10分未満でアクセスでき、交通量も少なく渋滞の心配もほとんどない。八代ICから九州道に入るといくつものトンネルを抜けて熊本県南部の人吉ICに到着する。人吉ICはB&Sみやざき以外にもフェニックス号、なんぷう号、きりしま号などの各方面の高速バスが100本以上発着する高速バス停。利用も比較的多く、ここで乗客が半減ということも少なくない。並行する肥薩線は高速バスに取って代わられたようなもので、「B&Sみやざき」が肥薩線の代替手段となっている。「B&Sみやざき」と新幹線を乗り継いだ場合の人吉IC~熊本間は1時間程度と鉄道よりも30分~1時間程度早く、本数も圧倒的に高速バスが多い。博多まで1時間30分と、鉄道ならようやく熊本に到着した時間で博多に到達できる。マイカーに加え、高速バスが鉄道路線のバイパスとして機能していることがわかる場面でもある。バスはすぐに発車し、えびのJCTから宮崎道に入る。途中で小林IC、都城北に停車し、乗客を降ろしていく。小林は吉都線の沿線でもはや鉄道で福岡に到達するのは1日単位の時間がかかる。都城も新幹線開業以前から高速バス移動が主体の都市で、2011年からしばらくは新八代駅と都城市街とを結ぶバスも運行されていたことがあった。この両バス停ではフェニックス号のほか、旧高速ツアーバス路線との競合もあり、利用の多さがうかがえる。各停留所とも年末年始には多くの乗客が狭い高速道路上のバス停でバスを待っているので、しっかりしたバスターミナルを整備したらどうかと思うほど。小林、都城北は市街地から距離があり、バス停までのアクセスにやや難がある。バスは青井岳の峠を越えて宮崎市街へ入り、宮崎交通の一大ターミナルである宮交シティに到着、大淀川を渡ると終点宮崎駅に至る。


 航空機と高速バスの2大シェアと呼ばれる福岡-宮崎間、そこに鉄道と高速バスを乗り換えて利用するという新しい移動手段が登場してまもなく10年。両区間の第三の移動手段として、また並行する鉄道路線のバイパス路線として、高速鉄道のような高速バスが南九州の交通に変革をもたらしている。